ベンチを見ろ 5・11 [2010年写真]
☆世田谷区だ。「幡ヶ谷（はたがや）原町」のバス停のベンチだ。意地悪く簡素だ。すわりにくい。中央に仕切りをつけた。バッグを置くぐらいの悪意のベンチだ。バス終了後、ここに座って仮眠する。コロナで、デパート地下の試食コーナーは廃止になり、女は失業し、しだいに蓄えも、ついえた。11月の明け方は冷え、還暦の歳にはこたえる。5月1日のNHKのストーリーズ『たどりついたバス停で~ある女性ホームレスの死~』で取りあげた。よくできたほうの番組だったが、このベンチを写しながらも、ここに込められた役所役人の狂った常識は見すごした。路上生活者が横になれないデザインへの熱狂については、『貧民の帝都』で指摘した。市民の死よりも、都市美化を優先する、「上下意識」にこりかたまった役所内に沈殿しする常識。このベンチに浅く腰かけている女を追い払うために、その頭蓋を殴りつけた男性市民は、都や区から人を汚物とみなして排除する必要を学んだのだ。「なにが差別はやめやめましょう」だ。いつも、悪は身内にいる。学校がいじめを生み、役所が差別を再生産する。
